名作と呼ばれる物語①

 物語を語る側は目的を持っている。その目的は、観客を楽しませることであったり、彼らに何かを考えさせることであったり、その両方であったりする。ただ、楽しませることと考えさせることを同時に成功させることはとても難しい。なぜなら、楽しませる要素が強ければただの娯楽、考えさせる要素が強ければただの説教になってしまうからである。とはいえ、世の中にはそれら2つの目的を成功させた物語が存在する。"GATTACA(ガタカ)"は、それら2つの目的を成功させた物語だと私は考えている。

 "GATTACA(ガタカ)"は、現代よりも遺伝子操作/検査技術が発展した近未来を舞台とした物語である。その近未来社会では、遺伝子操作/検査技術により、体外受精による赤ん坊の選抜や個人のDNA情報の流出が日常的に起きている。すぐに想像がつくと思うが、この物語が観客に考えさせようとしている事柄は遺伝子操作/検査技術の使い方である。一方で、観客を楽しませるのは、その近未来社会における人々の人間臭さである。この物語では、家族内の確執、友情、愛情、能力の有無によるコンプレックス、仕事の遂行に追い詰められる気持ち、果てしなく高い目標への憧れなど様々な感情が緻密に描かれる。物語の登場人物1人1人が何かしらの思いを抱えており、観客はその登場人物の少なくとも誰か1人には感情移入できるだろう。このような、物語の舞台となる近未来社会の設定だけでなく、登場人物の人間関係・心情変化が非常に自然に描かれ、緻密に練られている点が"GATTACA(ガタカ)"の最大の魅力である。

 "GATTACA(ガタカ)"は1997年に公開されたアメリカSF映画である。そして、2011年には、NASAによる「もっとも現実的なSF映画ランキング」で第1位に輝いた映画である。この映画は、遺伝子操作/検査技術に関する知識が皆無でも楽しめる。それと同時に、遺伝子操作/検査技術に関する知識があると、その緻密に現実的に練られた設定に感心できる面白さがある。最近の映画ではないが、気になる人にはぜひ観てほしい。また、遺伝子を扱う研究に携わる人に観てほしい映画でもある。(ちなみに、Wikipediaのストーリー欄にはさらりと結末まで書いてあるので、観る気がある人は読まないでほしい。。。)



 修論提出が迫り、こんなことを書いている場合ではないのだけれど、違う文章を書くと心が落ち着く。。。

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